医師ならではの不動産投資の記事を執筆して考えたこと
無記名記事なので、サイト名などは明らかにできませんが、少し前に、医師を読者にしたWebサイトで「医師ならではの不動産投資の考え方」について解説する3000文字ほどの記事を、6本執筆しました。
「医師ならではの不動産投資」というところで、読者である医師に説得力を感じてもらうためにはどのようなテーマ設定で、どのような論点を盛り込んだ構成にすればいいのか……。それを考えるのは、なかなか難しいのですが、しかしありきたりなものではないという意味で、楽しい面もあります。新規企画立案の楽しさですね。
ライターには単純に文章を書くのが好きなタイプと、記事企画を考えるのが好きなタイプがあって、私はどちらかというと後者のタイプです。もともと、書籍の企画編集の仕事を長くやっていたせいかもしれませんが、新しいことを考えるほうが(上手かどうかは別として)好きではあります。
穴は深く掘れば自然と広がる
それはさておき、いま、投資やマネー系の情報サイトは掃いて捨てるほどあふれていますが、ほとんどは「マネー初心者」「若者」「女性」「高齢者」といった大雑把なターゲット設定です。なかには、それくらいの大雑把なターゲットすら設定してないサイトもあります。裏ではペルソナを設定しているのかもしれせんが、表立ってそれが表されないのであればないのと同じです。しかし、これだけ情報過多の時代に「万人向け」は、「だれにも向けていない」ということとほぼ同義ではないでしょうか。
たとえば、「女性向けのマネー情報サイト」といった大雑把間くくりではなく、「20~30代で単身の女性向けのマネー情報サイト」の方がより深いエンゲージメントを得られるだろうということです。ただし、ターゲットにきちんとフォーカスされたコンテンツやUI/UXデザインが実現されていることが、絶対の前提になりますが。
情報発信主体のブランド力やサイトの目的にもよっては、必ずしもターゲットを絞ることが良いわけではないでしょう。たとえばツイッターやフェイスブックなどの交流サイトでは、特定のターゲットは設定されていません。しかし、参加者の交流よりも情報発信を主体とするメディアサイトにおいては、「狭く深く」が基本だと思われます。その意味では、先に仕事をした「医師向け」というくくりでもまだ大雑把だと感じられ、たとえば勤務医向けと開業医向けは当然サイトをわけるべきではないかと思いました。さらに開業医でも、クリニックと病院とではサイトをわけるべきかもしれません。
どこかで聞いた言葉に「穴は深く掘れば自然と広がる」というものがありました。メディアサイトでいうなら、狭く絞りこんだターゲットに適切なコンテンツを届けることで深いエンゲージメントを得られれば、そこからさまざまなビジネスの可能性が自然と広がるということでしょうか。
ただし、わけること自体を目的化して必要以上に細分化しても、それに見合うコンテンツやUI/UXデザインができなければ、看板倒れの誹りは免れません。たとえば、「内科クリニックを経営する開業医のための不動産投資サイト」というサイトコンセプトを立てたところで、「内科の開業医と整形外科の開業医とで、不動産投資の考え方に違いがあるのか」と聞かれると、少なくとも私には思いつきません(もしかしたら、あるのかもしれませんが)。一方、勤務医(給与所得者)と開業医(事業主)とでは、お金に関して異なる知識が必要なので、それぞれにフォーカスした異なるコンテンツを構成することは可能だと思います。
実のところ、「内科開業医の不動産投資と、整形外科開業医の不動産投資」のように、伝えるべきコンテンツに本質的な差異がないにもかかわらず、いわゆる「SEO」の目的でタイトルだけを変えて、ほぼ類似内容のサイトを別々に作るといったやり口を見かけることは、よくあります。しかしそういったインチキなやり方は、結局のところ信頼を失う結果につながるだけと思います。読者はバカではありません。(もしかしたら、そういうやり口のサイトは「バカな人だけ」をターゲットにしているのかもしれませんが)。
適切にターゲットを区分したWebサイトを運営し、読者の深いエンゲージメントを獲得できたとして、それをどうビジネスに結びつけるのかは、Webサイト運営者の腕の見せ所であり、ライターが関与するところではありません。私はWebサイトのコンセプト作りといったことにタッチする仕事はしていないので、Webサイトでのビジネス運営については素人です。
しかし、万人向けの、しかも品質が高くもない記事を大量に寄せ集めて「SEO対策」と称し、検索キーワードで引っかかったPVをたくさん集めるといった古臭い「コンテンツマーケティング」は、来年あたりそろそろ終わりに向かうような気がしています。するとそれにあわせて、「SEOライティング」や「SEO記事」のような、実態がかなり怪しいにもかかわらず一時期はかなり流行したワードも廃れていくのかも知れません。