「いいライターさんを探しています」という話(2)

前回の(1)では、SNSなどで広く極上のマグロを求める話を書きました。
今回は、その続きとして直接的に「紹介」を求められた場合について考えてみます。

道義的な責任を感じる「紹介」は、難しいことが多い

依頼者と他のライターさんの間に立って口利きをしたり、業務を仕切ったりして報酬の中抜きをする場合は、仕事としての責任が生じることは当然です。しかし、そうではない「単なる紹介」であっても、人や業務を紹介した場合、依頼者に対しても、ライターさんに対しても、多少は道義的な責任が生じると思われます。そしてこれが「紹介」を難しくする理由です。

他のライターさんを「紹介してほしい」と直接頼まれるのは、私に依頼をいただき、それに対して私がスケジュールの都合などでお引き受けできないケースです。この場合、相手もお困りでしょうから、私もなるべく紹介してあげたいとは思います。

しかし、相手はまず私に依頼をなさったわけですから、その私から紹介されるライターさんに対しても、少なくとも私と同じ程度の業務能力があることを期待するはずです。私自身の業務能力が飛び抜けて高いというつもりはないのですが、ある程度の水準には達していると自負しています。そのため、その水準に達しているライターさんでなければ、ご紹介することはできません。

ところが、私が業務能力をよく知っていて、「この人なら私と同じ程度かそれ以上の能力があります」と確信を持っていえるライターさんの知り合いは、片手の指でも余る程度しかいません。そのため、そもそも物理的に紹介することが難しいのが実情です。

たとえば、SNSなどで親しくなっていたり、知人の知人といった程度で知り合い関係のライターさんなら、もっとたくさんいます。しかし、SNSの書き込みとライターとしての業務能力にはなんの関係もありませんから、そこで親しくしていても、一緒に仕事をしたことがなければ、その業務能力はわかりません。私は、過去の経験上、ライターの能力は、実際に一緒に仕事をしてみなければわからないと確信しています。(もちろん、過去の実績をみればある程度検討はつきますが、ある程度でしかありません。その理由は、「記事制作で楽するためのライター探し(1)ライター業界の回転寿司・クラウドソーシング」で書いています)。

もし、一緒に仕事をしたことがないライターさんを紹介して、その人の業務能力が低くて編集者にご迷惑をお掛けするようなことがあれば、紹介した立場としては、やはり道義的な責任を感じます。そのため、むやみにだれでも紹介するわけにはいきません。

忙しいライターさんに変な相談はできない

また、これは逆の方向でもいえることです。

何度も仕事をご一緒したことがあり、仕事の内容や条件を私自身がよく知っている発注者からのご依頼であればいいのですが、あまりよく知らない発注者から紹介を求められてライターさんを紹介をした場合に、もしなにかトラブルが生じれば、今度はそのライターさんに対して道義的な責任を感じざるをえません。

トラブルが生じなくても、極端に短納期だったり報酬が低かったりする条件の悪い案件は、やはり相手に無理をさせることになるため紹介をすることは難しくなります。優秀なライターさんほど引く手あまたで、基本的に忙しいものです。とくに、ブックライターの場合、ひとつの案件が長期間にわたるため、同時にいくつもの案件を抱えていることもよくあります。そんな人が、わざわざ条件の悪い案件を受ける必要性はないからです。

ただ、フリーランスの仕事はどうしても受注に波があり、優秀なライターさんでもたまたま手が空いているという状況のときにはあるでしょう。そこで、多少条件が低い案件でも念のために、「ちょっと条件が悪いんですが、もし手が空いているようだったらご興味ありませんか?」と聞いてみることはあります。(引き受けてもらえる可能性は低いでしょうが)。

しかし、「クラウドソーシングレベル」と思えるような極端に条件が低い案件や、下請法に反しているなどコンプライアンス的に問題のある案件であれば、そんな案件の相談をすること自体が相手にとって失礼になるので、これは単にお断りするだけです。

もちろん、逆に、「自分が引き受けるのは内容的に難しいけれど、あのライターさんならぴったりはまりそうだ」というケースもあります。そんな場合は、喜んで紹介させてもらうこともあるので、ケースバイケースです。

依頼者側、ライターさん側のどちらの方向に対しても、紹介をする以上は道義的な責任が生じます。無責任に話だけを振るということはできません。それが、紹介というものが簡単ではない理由なのです。

そこで、どうせ責任が生じるのであれば、単なる紹介ではなくて、間に立って両者をマッチング・調整し、しかるべき報酬をもらうビジネスにしたほうが、領分が明確になるのでよいのではないかと思うこともあります。もしかしたら、将来にはそういうビジネスを展開するかもしれません。