「いいライターさんを探しています」という話(1)

「いいライターさんを探しています」
「ブックライターさんを紹介してもらえませんか」
といった声を、書籍・雑誌の編集者の方やWebディレクターの方から聞くことがよくあります。直接いわれることもありますし、SNSでそういった投稿を見かけることもよくあります。

中には、SNSのプロフィールなどに「売れるライターさんからの連絡大募集」とか、「ヒットする書籍企画の持ち込み歓迎」みたいなことを書いている編集者さんもいます。

私はそういう声を見聞きする度に、「ですよねー」と思いつつも、正直、ちょっとモヤモヤした気持ちにもなるのです。

ライターは増えているが…

統計的なデータはありませんが、たぶん、日本国内で仕事をしているフリーランスのライターは、全体としては増えているのだろうと実感しています。

社会全体で雇用の流動化が進んでおり、フリーランス、ギグワーカー、あるいは副業をする人などが増えていること、また、それと表裏一体ですが、クラウドソーシング(ランサーズはクラウドワークスなどのマッチングプラットフォーム)の普及による業務マッチングの機会が増えていることが、その背景にあります。

ライティング業務を「文章を書く」という側面だけに着目するなら(実はライティング業務の内容はそれだけではありませんが、それはとりあえず脇において)、日本では高校を卒業している人なら、ほとんどの人はある程度の水準でおこなうことができるはずです。

そのため、他のフリーランスの職種、たとえばイラストレーターやプログラマーと比べても、ライターになることは敷居が低いものであると感じられるのでしょう。業務の内容を問わなければ、とりあえず「ライターになる」こと自体は簡単です。クラウドソーシングで1000文字500円の記事を1、2本書いただけの人が、ライターと名乗ってもウソではないからです。

しかし、敷居が低くだれでも参入しやすいということと、優れた人が増えるということは、あまり相関しないのではないかと推測されます。

前にも書きましたが、どんな世界でも業務能力別の人口構成はピラミッド型になります。高い能力をもつ人はごく一握りで、中間的な人がその数十~数百倍いて、さらに下位の人がその数十~数百倍いる、ということです。下位から上位に進むには多くのふるいにかけられますし、また、そもそも「月に5~10万円稼げればいいや」と副業感覚、バイト感覚で参入し、本業にしようとは思っていない人も多いでしょうから、同比率では増えないと思われます。

そこで、ライターの全体数は増えても、主に増えるのは下位の部分で、中位の部分が多少増え、上位はごくわずかの増加、ということになるでしょう。イメージ的に表すなら、
下位のライター:5万人→10万人(100%増加)
になったとき
中位のライター:1000人→1500人(50%増加)
上位のライター:100人→110人(10%増加)
という感じです(あくまでイメージです)。実際には、増加率の差はもっと大きいかもしれません。

そのために、これだけクラウドソーシングが普及して、ライターになる人が増えているにもかかわらず、20年前と同じように、
「いいライターさんいませんか」
「ライターさんが足りない」
といわれ続けているのでしょう。

業務能力に優れたライターはそもそもとても少ないし、今でも増えてもいないし、今後も大きく増えることはない、いわば希少資源だということです。

極上のマグロ求めます

コンテンツビジネスにかかわる編集者やWebディレクターが、希少資源ともいえる優れたライターをいつも探しているのは当然のことなのですが、ではどうやって探すのか、ということです。

実は、それこそが、編集者やWebディレクターの仕事の「核心部」なのではないかと思うのです。周辺部ではなく、核心部です。

書籍の出版社でも、Webメディアでもいいのですが、コンテンツを売るビジネスにおいては、コンテンツの作り手を探すことは、他の業界に比していうなら「仕入」にあたるでしょう。

①いいコンテンツの作り手を仕入れて、
②それを編集やディレクションで加工し、磨き上げて、
③商品として完成させて販売する

というのが、コンテンツビジネスの一般的なモデル(広告モデルでも基本は同じ)です。
モデルの流れを見ればわかるように、そもそも①がなければ②③も実現しません。

鮨職人にとって、市場で目利きをして極上のネタを仕入れることが核心であり、不動産屋にとって地主とつながりをつけていい土地を仕入れることが核心であるように、編集者やディクレターにとって、希少なライターを仕入れることは業務の核心部であるはずです。

そして、それらはだれもが入手できるわけではない希少資源だからこそ、それを仕入れることができる能力こそが、鮨職人として、不動産業者として、あるいは編集者・ディレクターとしての「能力そのもの」を示しています。

冒頭に書いた「ちょっとモヤモヤ」という気持ちは、それが正しく理解されていないのではないかな、と感じるためです。

たとえば、鮨職人が、「どこかで極上のマグロ売っていませんか。教えてください」とか、不動産屋が、「高く売れる土地を持っている地主さんは連絡してください」とSNSで書いていたら、どう思うでしょうか?
「それを目利きして、探してくるのがお前の仕事だろ」と感じないでしょうか。少なくとも、そういった(ことをジョークではなく本気で)書いているのを見ると、優秀な鮨職人、不動産屋であるようには感じられないでしょう。

編集者・ディレクターが「いいライターさん(著者さん)を探しています」「売れる企画を求めています」とSNSで書いているのも、それと同じだと思うのです。

では、「紹介」についてはどうなのでしょうか? 後ほど、稿を改めて掲載したいと思います。